新しい心身医学 生かされてる医学
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第2講「性格分析」
自分の性格を知り、こころの奥にある「自分」を見つめる
はじめに なぜ、私たちは同じことを繰り返すのでしょうか
人の顔色が気になって、言いたいことが言えない。
いつも同じようなことで腹が立つ。
頼まれると断れず、自分を犠牲にしてしまう。
一生懸命頑張っているのに、なぜか 満たされない。
そして、こう考えます。
「これが私の性格だから、仕方がない」
しかし、本当にそうでしょうか。
私たちが「自分の性格」だと思っているものは、生まれたときからあったのでしょうか。
それとも、親子関係や人間関係、さまざまな経験を通して、長い年月をかけてつくられてきたのでしょうか。
さらに、その性格が、今の自分を苦しめているとしたら、どうすればよいのでしょうか。
生かされてる医学では、性格を良い性格と悪い性格に分けたり、無理に変えようとしたりはしません。
まず、自分のこころがどのように動いているのかを知ることか ら始めます。
性格分析は、自分を性格という型に閉じ込めるためのものではありません。
これまで「自分」だと思っていたものを見つめ直すための方法です。
今回は、性格分析テストと充実感テストを実際に行い、さらに症例を通して、自分のこころを読み解く方法を学んでいきましょう。
1.私たちのこころには、五つの働きがあります
生かされてる医学では、性格を五つのこころの働きから見ていきます。
A きびしい親
相手の欠点や間違いを指摘し、正しいことを教え、自分の意見を主張する働きです。
規則を守り、責任を果たし、子供や部下を教育するために必要です。
しかし、この働きが強くなりすぎると、人の欠点ばかりが目につき、批判的、攻撃的になることがあります。
B 優しい親
相手を思いやり、助け、育てようとする働きです。
温かい人間関係をつくり、人の成長を喜びます。
しかし、強くなりすぎると、過保護や過干渉になったり、相手のために無理をしすぎたりすることがあります。
C 合理性
物事を冷静に考え、論理的に判断する働きです。
感情に振り回されず、現実的な問題を解決するために必要です。
しかし、合理性だけに頼りすぎると、自分の感情を抑え込み、無感動になってしまうことがあります。
D 自由気ままな子供
自分の欲求を満たし、自由に楽しく生きようとする働きです。
好奇心、活力、行動力の源です。
しかし、思い通りにならないと、不満や怒り、いら立ちが生まれます。
E 人の評価を気にする子供
人から嫌われたくない、認められたい、失敗したくないという自己防衛の働きです。
自己反省し、人の意見を聞き、人の不安を理解するためにも必要です。
しかし、強くなりすぎると、人の評価ばかりを気にして、言いたいことも言えず、自分を抑えてしまいます。
性格の長所は短所であり、短所は長所です
この五つの働きは、どれも人間が生きていくために必要です。
優しいことが、いつも良い結果につながるとは限りません。
厳しいことが、いつも悪いわけでもありません。
大切なのは、五つの働きが、自分の中でどのような関係になっているかを知ることです。
2.不満と不安――こころの中で何が起こっているのでしょうか
五つの働きの中でも、まず注目したいのはDとEです。
Dは、自分の欲求を満たしたい働きです。
Eは、自分を守りたい働きです。
例えば、職場で上司から注意されたとします。
ある人は、
「なぜ、自分ばかり注意されなければならないのか」
と腹を立てます。
これは、自分の思い通りにならないことへの不満です。
一方、別の人は、
「自分の能力が足りないのだろうか」
「嫌われてしまったのではないか」
と不安になります。
同じ出来事でも、こころの反応は違います。
さらに、一人の人間の中で、両方が起こることもあります。
「上司の言うことは間違っている」
しかし、
「逆らったら仕事を失うかもしれない」
と不安になるのです。
自分を主張したい。
しかし、人から悪く思われたくない。
この二つの働きがぶつかると、不満と不安の葛藤が生まれます。
また、Aのきびしい親とBの優しい親が、同じ相手に対して働くこともあります。
相手の欠点が許せない。
しかし、その相手を見捨てることもできない。
このような愛情と批判の葛藤を「愛憎の渦」と呼んでいます。
【動画1】性格分析の基本を学ぶ
性格分析―愛憎の渦と不満と不安の葛藤を紐とく
この動画では、五つの働きの関係から、不満と不安、愛情と批判の葛藤を学びます。
動画を見る前に、考えてみてください。
あなたは、人の欠点が気になりやすいでしょうか。
それとも、人から悪く思われることが気になるでしょうか。
あるいは、その両方があるでしょうか。
動画を見終わったら
最近、不満や不安を感じた出来事を、一つ思い出してください。
そのとき、自分のこころの中で何が起こっていたのでしょうか。
自分の思い通りにしたかったのでしょうか。
人から認められたかったのでしょうか。
相手の欠点が許せなかったのでしょうか。
大切なのは、不満や不安をなくそうとすることではありません。
「私は今、何に不満を感じ、何を恐れているのか」
そのことに気づくことです。
3.性格分析テスト――自分の性格を調べてみましょう
ここまで学んだところで、実際に自分の性格を調べてみましょう。
生かされてる医学では、50問の性格分析テストを用意しています。
A・B・C・D・Eの五つの働きを、それぞれ点数とグラフで見ることができます。
性格のグラフを、どのように読むのでしょうか
まず、AとBを比較します。
これは主として、他人との関係です。
Aが高ければ、相手の欠点が目につきやすくなります。
Bが高ければ、相手の長所が目につきやすくなります。
次に、DとEを比較します。
これは自分との関係です。
Dが高ければ、「私は正しい」という気持ちが強くなります。
Eが高ければ、「私は間違っているのではないか」という気持ちが強くなります。
さらに、Cの合理性の高さも見ていきます。
これらの関係から、代表的な10タイプの性格を考えることができます。
しかし、ここで注意していただきたいことがあります。
性格分析テストの結果が、そのまま本当の性格とは限りません。
人間は、長い年月をかけて「こういう自分でなければならない」というセルフイメージをつくります。
そして、そのセルフイメージに従って、自分の性格を答えてしまうことがあります。
だからこそ、テストの数字だけではなく、実際の言動や人間関係も見ていく必要があるのです。
【実践1】50問の性格分析テスト
テストが終わったら、五つの点数を確認してください。
そして、10タイプのグラフと見比べてみましょう。
自分が思っていた性格と、テストの結果は一致しているでしょうか。
今は、自分がどのタイプかを決めつける必要はありません。
次の充実感テストと合わせて考えていきましょう。
4.充実感テスト――今の自分は、どのような状態でしょうか
性格分析テストでは、自分の性格の傾向を調べました。
しかし、性格が分かっただけでは、現在の自分のこころの状態までは分かりません。
そこで、もう一つ、充実感テストを行ってみましょう。
生かされてる医学では、20問の充実感テストを使い、二つの指数を調べます。
爽やか指数
現在の生活の中で、どれだけ爽やかさや充実感を感じているかを示す指数です。
不快指数
現在の生活の中で、どれだけ不満や不安、不快感を感じているかを示す指数です。
この二つを合わせて見ることで、現在のこころの状態を考えることができます。
例えば、爽やか指数が低く、不快指数が高い場合は、強い不快感の中で生活している可能性があります。
一方、爽やか指数も不快指数も低い場合があります。
この場合は、爽やかさも不快感もあまり感じなくなっている「無感動さん」の状態が考えられます。
ここが重要なところです。
本人は、
「そんなに苦しいわけではない」
「特に困っていることもない」
と思っているかもしれません。
しかし、実際には、こころの活力が低下している可能性があるのです。
【実践2】20問の充実感テスト
テストが終わったら、爽やか指数と不快指数を確認してください。
そして、先ほどの性格分析テストの結果と合わせて見てみましょう。
性格分析と充実感テストを合わせて考える
生かされてる医学では、性格の長所と短所は表裏一体だと考えています。
充実感が高いときには、性格の長所が発揮されやすくなります。
しかし、充実感が低下すると、同じ性格が自分を苦しめる方向に働くことがあります。
例えば、真面目で責任感が強い人がいます。
周囲から頼られ、仕事を任されます。
本人も、それに応えようと一生懸命頑張ります。
しかし、仕事が増え、疲れがたまり、やがて失敗 してしまうことがあります。
すると、
「もっと頑張らなければならない」
と考え、さらに無理を重ねます。
頑張る。
疲れる。
失敗する。
自信を失う。
さらに頑張る。
こうして、長所だった性格が、自分自身を追い詰めることがあります。
生かされてる医学では、このような悪循環を「自滅のシナリオ」と呼んでいます。
ここで大切なのは、性格分析テストと充実感テストの二つを合わせて考えることです。
自分は、どのような性格を持っているのか。
そして、今、その性格がどのように働いているのか。
その両方を見つめる必要があるのです。
※二つのテストは、自分の状態を考えるための学習用の指標です。点数だけで医学的な診断を行うものではありません。
5.実際の症例を、一緒に分析してみましょう
ここからが、今回の講座で特に学んでいただきたい部分です。
実際の症例を通して、性格分析と充実感テストを、どのように組み合わせて読み解くのかを学 びます。
私の説明を聞くだけでなく、皆さんも一緒に考えてみてください。
症例 「良い人」を演じていた男性
50歳代半ばの男性です。
この男性は、十年ほど前から中性脂肪が高くなり、医師から薬を勧められていました。
しかし、薬を飲み始めると一生続けなければならないのではないかと考え、服用していませんでした。
それでも、
「本当に薬を飲むべきなのだろうか」
と悩んでいました。
また、年齢とともに飲酒量が増えていました。
飲酒を制限するとストレスが強くなるように感じていましたが、一方では、身体への影響も心配していました。
性格分析テストの結果
項目 | 点数 |
A きびしい親 | 8点 |
B 優しい親 | 15点 |
C 合理性 | 16点 |
D 自由気ままな子供 | 4点 |
E 人の評価を気にする子供 | 12点 |
本人は、自分の性格を「ぼろぞうきんさん」だと考えていました。
確かに、グラフを見ると、BがAより高く、EがDより高くなっています。
優しく、人の評価を気にし、自分の欲求を抑える性格に見えます。
本人も、それが自分の性格だと思っていたのです。
充実感テストの結果
項目 | 点数 |
爽やか指数 | 8点 |
不快指数 | 33点 |
爽やか指数は、著しく低下していました。
不快指数も高いとはいえず、無感動さんの状態が考えられました。
つまり、本人が感じている以上に、こころの活力が低下している可能性があります。
ここで、一つの疑問が生まれます。
この男性は、本当に「ぼろぞうきんさん」なのでしょうか。
本人の言葉から、こころを読み解いてみましょう
まず、薬について考えてみます。
医師から服用を勧められても、自分が納得できないので飲まない。
ここには、自分の考えを通したい働きが見られます。
Aのきびしい親やDの自由気ままな子供が働いている可能性があります。
ところが、その直後に、
「でも、本当に飲むべきなのだろうか」
という不安が出てきます。
今度は、Eの自己防衛の働きが強くなっています。
飲酒についても同じです。
「お酒を制限するとストレスが強くなる」
という思いがあります。
しかし、身体への影響を考えると、不安になります。
このように、一人の人間の中で、異なるこころの働きが次々に現れているのです。
ここで、動画を見る前に考えてください
この男性は、本当に「ぼろぞうきんさん」なのでしょうか。
性格分析テストでは、優しく、人の評価を気にする性格に見えます。
しかし、実際の言動を見ると、自分の判断を通そうとする強い働きがあります。
そして、その後に不安が生まれています。
どうして、このような違いが生まれるのでしょうか。
自分が自分だと思っている性格と、実際のこころの働きが違っているのではないでしょうか。
では、その理由は何なのでしょうか。
【動画2】実際の症例を一緒に分析する
良い人を演じている「バラバラさん」
この動画では、本人の文章、性格分析テスト、充実感テストの結果を手がかりに、実際のこころの動きを一つずつ読み解いていきます。
今度は、単に説明を聞くのではなく、自分でも分析しながら見てください。
「ここでは、どの自分が働いているのだろう」
「なぜ、このような性格になったのだろう」
「自分にも、同じようなことはないだろうか」
そんなことを考えながら、動画を見てください。
6.この症例から、何が分かったのでしょうか
この男性は、自分の性格を「ぼろぞうきんさん」だと思っていました。
しかし、実際の言動を一つずつ見ていくと、違う性格の働きが現れていました。
自分の考えを強く主張したい自分。
しかし、結果が怖くて不安になる自分。
この二つの働きが葛藤していました。
そこで、表面的には「ぼろぞうきんさん」であっても、その奥には「バラバラさん」の働きがあるのではないかと考えました。
では、なぜ、本来の性格とは違う性格を生きているのでしょうか。
その理由の一つとして、不安から自分を守るためだった可能性が考えられます。
自分の意見を強く主張すれば、周囲と衝突するかもしれない。
しかし、衝突すると不安になる。
そこで、自分の意見や欲求を抑え、周囲に合わせて生きる。
それが長く続くと、本人自身も、それが本当の自分の性格だと思うようになります。
生かされてる医学では、このようにつくられた性格を「仮面」として考えます。
ここに、性格分析の難しさと面白さがあります。
本人が自分だと思っている性格が、必ずしも本当の性格ではないのです。
これは、この男性だけの問題ではありません。
私たちも、知らず知らずのうちに、周囲の期待に応えるための自分をつくっているかもしれません。
そして、それを本当の自分だと思っているかもしれないのです。
7.性格が分かれば、問題は解決するのでしょうか
ここまで、性格分析と充実感テストを学び、実際の症例も見てきました。
しかし、ここで大きな問題が残ります。
自分が人の評価を気にしていることが分かった。
自分が腹を立てやすいことも分かった。
無理をして頑張っていることにも気づいた。
では、それでこころは変わるのでしょうか。
例えば、
「もう人の評価を気にするのはやめよう」
と決心したとします。
しかし、翌日になると、また人の評価が気に なります。
「もう腹を立てるのはやめよう」
と思っても、また同じことで腹が立ちます。
「無理をして頑張るのはやめよう」
と決めても、気がつけば、また頑張りすぎています。
なぜ、分かっているのに変われないのでしょうか。
それは、性格が単なる考え方ではなく、長い年月をかけてつくられてきた反応だからです。
そして、その奥には、もっと深い問題が隠れていることがあります。
「自分は、どうしてこんな生き方をしてきたのだろう」
「本当は、何を求めていたのだろう」
「何を恐れて、自分を抑えてきたのだろう」
そこまで見つめていく必要があるのです。
この問題を、次回から学ぶ「新型ストレス」と「自分分析」で、さらに深く考えていきます。
8.性格は、本当の私なのでしょうか
最後に、もう一つ大切な問題を考えてみましょう。
私は、人の評価を気にする。
私は、腹を立てる。
私は、不安になる。
私は、人に優しくする。
私は、合理的に考える。
では、そのうちのどれが、本当の私なのでしょうか。
不安になっている自分がいます。
そして、その不安になっている自分を見つめることもできます。
腹を立てている自分がいます。
そして、その腹を立てている自分に気づくこともできます。
では、その自分たちを見つめている「私」とは、誰なのでしょうか。
生かされてる医学では、過去からつくられたさまざまな自分を俯瞰し ている「誰でもない私」を、F0と呼んでいます。
今は、F0を十分に理解できなくても構いません。
ただ、一つ考えてみてください。
自分が自分だと思っている性格は、過去からつくられたものかもしれません。
もしそうであるなら、その性格に振り回されるだけでなく、そこから自由になる道があるのではないでしょうか。
生かされてる医学では、そのために、こころ分析だけでなく、丹田呼吸法やゼロ体験も大切にしています。
性格を無理に変えて、理想の自分になろうとするのではありません。
過去からつくられた自分を知り、その自分から少し離れてみる。
そして、本当の私とは何かを、自分自身で確かめていく。
性格分析は、そのための第一歩です。
9.今回の学習課題
ここまで学んだら、次のことを自分自身について考えてみてください。
① 自分は、何に不満を感じやすいでしょうか。
② 自分は、何を恐れ、不安になりやすいでしょうか。
③ 自分の性格の長所が、自分を苦しめたことはないでしょうか。
④ 性格分析テストと充実感テストから、今の自分について何が見えてきたで
しょうか。
⑤ 人から嫌われないために、本当の気持ちとは違う自分を演じていないでしょうか。
そして、もう一つ。
自分が自分だと思っている性格は、本当に私そのものなのでしょうか。
今すぐ答えを出す必要はありません。
大切なのは、自分のこころを正直に見つめることです。
10.次回 第3講「新型ストレス」
今回は、性格分析によって、自分の反応の型を知りました。
さらに、充実感テストを通して、現在のこころの状態も調べました。
しかし、人間の苦しみには、性格分析だけでは十分に説明できない問題があります。
例えば、
「仕事に大きな不満はない」
「特に強い不安があるわけでもない」
「人間関係も、何とかやっている」
しかし、
「何となく毎日が満たされない」
「何かをしたいのに、何をしたいのか分からない」
「自分の人生を生きている気がしない」
このような人のこころの中では、何が起こっているのでしょうか。
次回は、27歳の女性の症例などを手がかりに、生かされてる医学の「新型ストレス」について学びます。
「自分を生きたい自分」と「社会に適応しようとする自分」。
さらに、その葛藤の中で、何も感じなくなっていく自分。
性格分析だけでは見えてこなかった問題を、もう一段深く考えていきましょう。
次の第3講「新型ストレス」へ進んでください。
医学博士 笹田信五
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