新型ストレス
「自分を生きたい自分」と「社会に適応しようとする自分」
― なぜ現代人は、疲れ、迷い、動けなくなるのか ―
以前はもっと動けたのに、最近は疲れやすい。
朝起きるのがつらい。
片づけや掃除など、以前なら普通にできていたことができない。
仕事の能率が落ちた。
判断することが面倒になった。
イライラする。
何となく気持ちが重い。
何をしても楽しくない。
「自分は何をしたいのだろう」と考えても、よく分からない。
そして、
「自分は怠け者になったのではないか」
と、自分を責めてしまう。
生かされてる医学では、このような状態を考えるときに、単に「もっと頑張ればよい」とは考えません。
その人のこころの中で、何が起きているのかを見ていきます。
そこで見えてくるのが、
「自分を生きたい自分」と「社会に適応しようとする自分」の葛藤
です。
生かされてる医学では、このような持続的なこころの葛藤を理解するために、**「新型ストレス」**という考え方を用いています。
※「新型ストレス」は、生かされてる医学で用いている独自のこころ分析の概念であり、一般医学における正式な診断名ではありません。疲労、無気力、睡眠障害などには身体疾患や精神疾患が関係することもあるため、必要な場合には適切な医学的診断を受けることが大切です。
まず見ていただきたい動画
「新型ストレス①―怠け者になったと、自分を責めないでください」
2026年8月14日
新型ストレスの入口となる動画です。
「以前のように頑張れない自分」を責める前に、自分のこころの中で何が起こっているのかを見ていきます。
一人の中に、いくつもの「自分」がいる
私たちは普通、
「私は私、一人だけだ」
と思っています。
しかし、自分のこころを丁寧に観察していくと、一人の中に異なる要求を持つ「自分」がいることに気づきます。
生かされてる医学の新型ストレスでは、最初にそれを三つの自分として捉えます。
第1の自分――「自分を生きたい自分」
第1の自分は、
「自分を生きたい自分」
です。
「本当はこうしたい」
「こんな仕事をしたい」
「もっと自由に生きたい」
「これは納得できない」
「人から言われるままではなく、自分で決めたい」
という自分です。
人間は単に生き延びるだけではありません。
自分なりの考えを持ち、自分なりの価値観を持ち、「自分の人生を生きたい」と思います。
この第1の自分がうまく生きられなくなると、
不満
が生じます。
「こんなはずではなかった」
「どうして私ばかり我慢しなければならないのか」
「この生き方は自分の人生ではない」
という思いです。
第2の自分――「社会に適応しようとする自分」
しかし、私たちは一人だけで生きているわけではありません。
仕事があります。
家族があります。
学校があります。
経済的な問題があります。
人間関係があります。
社会の規則があります。
そこで出てくるのが、
第2の自分――「社会に適応しようとする自分」
です。
「仕事を辞めたら生活できない」
「家族を養わなければならない」
「失敗してはいけない」
「周囲に迷惑をかけてはいけない」
「社会から認めてもらわなければならない」
「将来困らないようにしておかなければならない」
と考える自分です。
社会の中で生きる以上、この第2の自分も必要です。
そして第2の自分がうまく社会適応できないと、
不安
が生じます。
どちらも大切だから、葛藤が始まる
問題は、第1の自分が悪いことでも、第2の自分が悪いことでもありません。
どちらも必要なのです。
自分を生きたい。
しかし、社会にも適応しなければならない。
ここに新型ストレスの難しさがあります。
第1の自分に従って、
「もうこんな仕事は辞めて、自分の好きなことをしよう」
と思う。
すると第2の自分が、
「生活はどうするのか」
「家族はどうするのか」
「将来どうするのか」
と不安になります。
反対に、
「そんなことを考えても仕方がない。仕事だから我慢して頑張ろう」
と第2の自分に従う。
すると今度は第1の自分が、
「こんな人生を送りたいわけではない」
「納得できない」
と不満になります。
つまり、
第1の自分を選べば不安になり、第2の自分を選べば不満になる。
どちらへ行っても、もう一方の自分が反対するのです。
そこで第3の自分が生まれる
そこで私たちは、
「自分も生きたい。しかし社会にも適応したい」
と考えます。
つまり、
両方を満たそうとします。
これが新型ストレスでいう、
第3の自分
です。
第3の自分は、最初から「何もできない自分」なのではありません。
最初は、
第1の自分も、第2の自分も、どちらも満たしたい自分
です。
しかし、第1の自分と第2の自分の要求が矛盾していれば、両方を完全に満たすことはできません。
そこで葛藤が続きます。
「こちらへ行こうか」
「いや、やはり駄目だ」
「では、こちらへ行こう」
「でも、それも嫌だ」
こころの中でこれが繰り返されます。
決められない自分になっていく
この葛藤が続くと、判断が難しくなります。
本人から見ると、
「何がしたいのか分からない」
「決められない」
という状態です。
周囲から見ると、
「言うことが変わる」
「はっきりしない」
「決断しない」
ように見えることもあります。
しかし、その奥では、
異なる二つの自分が、同時に生きようとしている
のです。
単なる優柔不断とは違います。
葛藤は、こころのエネルギーを使い続ける
外からのストレスなら、その出来事が終わればストレスも軽くなることがあります。
ところが新型ストレスでは、葛藤している相手が自分の中にいます。
仕事から帰っても、
旅行に行っても、
休んでいても、
第1の自分と第2の自分は一緒です。
そのため、葛藤が持続します。
やがて、
「もう考えたくない」
「どうでもよい」
「何をしても変わらない」
という諦めが生じます。
そして、
疲労感、
充実感の低下、
無気力、
無感動、
につながっていきます。
ここまで来たときに、
「自分は怠け者になった」
と自分を責めると、さらに苦しくなります。
だからこそ、
「なぜ動けなくなったのか」
を考えることが大切なのです。
こころの問題なのに、なぜ身体まで調子が悪くなるのか
人間のこころと身体は別々に動いているわけではありません。
こころの状態は、
自律神経系、
内分泌・ホルモン系、
免疫系、
そして睡眠、食事、運動などの日常生活とも深く関係しています。
これが心身相関です。
葛藤が長く続けば、
眠りにくい、
食欲が変化する、
肩がこる、
頭が重い、
胃腸の調子が悪い、
動悸がする、
身体がだるい、
など、身体にもさまざまな変化が現れることがあります。
さらに、つらさを紛らわせるために、過食、飲酒などに頼れば、生活習慣そのものも乱れていきます。
したがって、こころの問題を、
「気の持ちよう」
だけで済ませることはできません。
関連動画
「新型ストレス②―こころの問題なのに身体の調子まで悪化する理由」
2026年8月14日
新型ストレスと心身相関との関係を理解するための動画です。
さらに詳しく見る
「新型ストレス②―こころの問題なのに身体の調子まで悪化する理由」
2021年4月
なぜ「新型」ストレスなのか
生かされてる医学では、この葛藤には時代背景も関係していると考えます。
昔の人々にとっては、
食べること、
住むところを確保すること、
病気や災害から身を守ること、
などが現在よりはるかに大きな課題でした。
生き延びるためには、家族や集団や社会に適応することが重要でした。
ところが科学技術の発達と社会の変化によって、とくに物質的に豊かな社会では、個人が、
「私はどう生きたいのか」
「私は何をしたいのか」
を考える余地が大きくなりました。
これは大きな進歩です。
しかし同時に、
「自分を生きたい」という要求も大きくなりました。
一方で、社会に適応しなければ生活できないという事実は残っています。
そこで、
「自分を生きたい自分」と「社会に適応しようとする自分」
が、ともに大きな力を持つようになります。
生かされてる医学では、この二つの自分の持続的な葛藤を、現代に特徴的な問題の一つとして捉えています。
関連動画
「新型ストレス③―新型ストレスは、いつから現れたのか?」
2021年5月2日
時代の変化と第1・第2の自分の関係から、新型ストレスを考えています。
「自分らしく生きればよい」だけでは解決しない
ここは、とても重要なところです。
新型ストレスに苦しんでいる人に、
「もっと自分らしく生きたらよい」
と助言するとします。
これは第1の自分を応援することになります。
しかし第2の自分は、
「そんなことをしたら生活できない」
と不安になります。
反対に、
「そんなことを考えずに、もっと社会に適応して頑張りなさい」
と言えば、第2の自分を応援することになります。
すると第1の自分は、
「もうこれ以上、自分を犠牲にしたくない」
と反発します。
つまり、新型ストレスの問題は、
第1の自分を勝たせればよい、第2の自分を勝たせればよい、という問題ではありません。
だから難しいのです。
関連動画
「新型ストレス④―なぜ、私たちは新型ストレスになり葛藤するようになったのか?」
2021年5月7日
第1の自分か第2の自分かという二者択一では、なぜ行き詰まるのかを考えます。
実際の出来事に「三つの自分」を当てはめてみる
例えば、
「会社のやり方には納得できない。しかし家族を養わなければならないので、我慢して働いている」
という人がいたとします。
ここには、
第1の自分
「会社のやり方には納得できない。自分はこんな仕事の仕方をしたくない」
という自分があります。
一方、
第2の自分
「仕事を辞めたら生活できない。家族を養わなければならない」
という自分があります。
そこで、
第3の自分
「納得できないけれど辞めることもできない」
という状態になります。
この状態が一日や二日なら大きな問題にならないかもしれません。
しかし何年も続けば、
「もうどうでもよい」
「考えても仕方がない」
「何もしたくない」
という状態になっても不思議ではありません。
ここで大切なのは、
誰かが悪いと決めることではありません。
自分のこころの中で、
「どの自分と、どの自分が、何について葛藤しているのか」
を具体的に見つけることです。
実際に演習してみる動画
「新型ストレス⑤―演習① 三つの自分の当てはめと、従来の方法の限界」
2021年5月11日
文章だけでは分かりにくい「第1・第2・第3の自分」を、具体的な事例に当てはめて考えます。
新型ストレスを知ることは「解決」ではありません
ここも、生かされてる医学では非常に大切にしています。
「私は新型ストレスだったのだ」
と分かっただけで、すべてが解決するわけではありません。
新型ストレス分析は、
自分の中で何が起こっているのかを明らかにする方法
です。
いわば問題の構造を知る段階です。
しかし、ここまで分かることには大きな意味があります。
それまで、
「自分は駄目になった」
「自分は怠けている」
「もっと頑張らなければならない」
と思っていた人が、
「自分の中に、異なる要求を持つ自分がいて、その葛藤が続いているのではないか」
と見ることができるようになるからです。
性格分析から、新型ストレスへ
公開講座では、まず性格分析を学びます。
性格分析では、
「私はどのようなときに不安になるのか」
「どのようなときに不満を感じるのか」
「それをどのような反応の仕方で処理しているのか」
を見ていきます。
しかし、性格分析だけでは十分ではありません。
次に新型ストレス分析によって、
「自分を生きたい自分」と「社会に適応しようとする自分」が、どのように葛藤しているのか
を見ます。
そして、さらにその先へ進みます。
では、「自分」とはいったい誰なのか
ここまで考えると、新しい疑問が出てきます。
第1の自分も「私」。
第2の自分も「私」。
第3の自分も「私」。
では、
本当の「私」は誰なのでしょうか。
ここから、生かされてる医学の自分分析が始まります。
新型ストレスの分析は、解決そのものではありません。
しかし、
「自分とは一人ではない」
ということに気づく、大切な入口になります。
次に見ていただきたい動画
「新型ストレス⑥―演習② 解決への一歩のために、自分分析を学ぼう・前」
2021年5月12日
新型ストレスを理解したあと、なぜ自分分析が必要になるのかを説明しています。
「新型ストレス⑦―演習③ 自分分析の理解はちょっと大変ですが、この山を越えれば、希望が見えてきます」
2021年5月13日
三つの自分を知るところから、さらに深く「自分とは何か」を見つめていきます。
「自分を責める」ことから、「自分を観察する」ことへ
新型ストレスを学ぶ目的は、
「あなたは新型ストレスです」
と決めつけることではありません。
まして、自分に新しいレッテルを貼ることでもありません。
大切なのは、
自分を責めることから、自分を観察することへ変わることです。
疲れている自分がいる。
不安な自分がいる。
不満な自分がいる。
社会に適応しようとしている自分がいる。
自分の人生を生きたい自分がいる。
どちらも捨てられず、困っている自分がいる。
まず、そのことを静かに見つめます。
そして、
「この自分たちは、いったいどこから作られてきたのだろう」
と、さらに深く見ていきます。
それが、次の自分分析につながります。
公開講座で学んでいただきたいこと
この公開講座では、最初から「答え」を覚える必要はありません。
まず、自分の日常を観察してみてください。
「いま不安になっているのは、どの自分だろう」
「いま不満を感じているのは、どの自分だろう」
「私は本当は何をしたいのだろう」
「それを止めている自分は、何を心配しているのだろう」
「私は、二つの自分の間で行ったり来たりしていないだろうか」
こうして自分のこころを見ることが、新型ストレスを学ぶ第一歩です。
性格分析で自分の反応の型を知る。
新型ストレスで、自分の中の葛藤を知る。
そして、自分分析によって、
「自分とは何か」
をさらに深く見つめていく。
公開講座では、この順序で一緒に学んでいきます。
次へ
自分分析
― 自分の中の「いろいろな自分」を見つめる ―